第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

山田 錦の【通訳ガイド日記 6】

2010年 8月16日(月)


久しぶりに通訳ガイドの仕事をしました.
電話口での、交渉で、
しどろもどろの英語になってしまい、
恥ずかしい思いをしました。
英語でいうと、

I felt awkward.  

だって、電話口で、コンシェルジュさんが、
聞いてらしたので。

(すみませんねえ。へたくそな英語で。)

でも、まあ、何とか交渉成立。

その翌日。


  【午前 8時30分】

からすま京都ホテルにお迎え。

目印に、


「ツアーの旗を持っています。」


と、いっておいたのですが、
こういうときに、なぜか、
別のどこかの通訳ガイドさんが、
ゴタの旗と、紛らわしい旗を持って、
迎えにきていました。

(もう、真似しないでよぉ!)

と、一瞬、思ったが、
それは、多分、あちらさんも、
そう思っていたでしょうね。

それに、ここは、

サンライズ・ツアー」

の集合場所。

同業が、多いのは、あたりまえ。

待つこと、10分、午前8時40分、

アレッサンドロさんと、
そのご一家が、現れました。


「ナ、ナイス トゥー ミーチュー。」


「Hello, Mr. Yamada. I'm pleased to meet you!.」


(あ、なるほど、英語、お上手だなあ)


と、感心・・・・・・している場合じゃない。


自己紹介から、始めます。

「山田です。よろしくお願いします。
 こちら、本日の運転手、ピータローさんです。」


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お客様は、4名様。
6人乗りセダンで、スタート。


きょうは、大文字の送り火
混雑を予想していましたが、
観光地は、以外に、ガラガラでした。


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  【金閣寺


到着する前に、眼前に、
左大文字が、見えますので、
この説明は、欠かせません。
約80基の、点火炉で、文字を作ります。


送り火は、5つの山の斜面に、点されます。
そして、あーです。こーです、と、
わずか、2~3分のうちに、
説明を、終えなければ、なりません。

dead spirits 死者の霊、
なんて、話し出すと、止まりませぬ。
死後の世界の話になって、
死んだら、どこへ、行くか、なんて話になります。

死んだら、まず、死出の山だ。
ここを、1週間で、越えます。真っ暗ですので、
提灯が、必要です。

この世で、悪いことばかり、
していると、提灯が、当たりませんからね。

あ、すんませんでした。それは、私のことですね。

1週間目に、三途の川に、たどり着きます。
大きな川です。淀川ぐらいは、あるかな。

この、大きな川を見て、
たいていの人は、後悔するのだそうです。


 「し、しまった。本当に、
  三途の川なんて、あったのか!」


と、嘆くのだそうです。

そうすると、その、そばで、奪衣婆という、
ばあさまが、うすら笑うとか。


 「 ひっひっひっひひ・・、お前は、
   生前、よほど、
   悪いことを、してきたのであろう。」


 「 婆さん、頼むよ、
   あの渡し舟に、乗せてもらえないかなぁ。」



 「 お前さん、着ている着物を、
   こっちに、よこしな。」



この、奪衣婆、死者の着物を、剥ぐと、
木の側にいる、懸衣翁と呼ばれる、
じいさまに、さっと、手渡す。


じいさまは、その衣類を木の枝に、掛ける。
木は、衣紋樹と呼ばれる木で、
生前の罪の重さによって、
枝が、ギュギュギュと、重みで、下がり落ちる。

それを、見たばあさま。 


 「 お前のような、罪人は、
   舟に乗せるわけにはいかない。
   この川を歩いて、渡ってゆくがよい。」

  うお座

この川には、ピラニアが生息しています。
渡っていく罪人の足に、食らいつきます。

罪人が、向こう岸に、渡りつくときには、
もう、罪人の足は、骨だけに、なっています。

川を渡りきったところに、裁判所が、あります。
秦江王の裁判を受けることになっています。

書類審査、罪状認否など、
生前の行いの、チェックを受けます。
ここは、初七日の
裁判審議が行われる場所です。


また、1週間歩き続けます。
2七日の裁判は、初江王の裁判です。
それが、終わると、
また1週間歩き、3七日の裁判となります。


ここは、五官王の裁判です。
裁判官の側に、ネコとヘビが、います。
ここでは、生前の、浮気が調べられます。

奥さんに、内緒で、愛人をかこっていたら、
ネコが、男根に、かぶりつきます。


ネコは、

「この、悪さの、お◯◯◯◯め。」

と、咎めるのです。

ヘビは、女性の、(公開禁止)に、入り込みます。
ズルズルズルと。気持ち悪いこと。
もう、喩えようがありません。

やっと、裁判が、終わっても、
また1週間歩いて、次の、
4七日の裁判を受けなければなりません。

その後、5七日の裁判も、待っています。

5七日の、裁判は、シャバでいう、
最高裁判所です。
ここは、閻魔法王庁です。


玻璃の鏡があります。
これに、生前の自分が、映っています。

生前の自分が、悪いことばかり、
していると、罪人は、泣き出します。


閻魔大王が、いいます。


「どうじゃ、こんな、悪人は、
 地獄に、落ちるのは、仕方があるまい。」


「助けてくださいよ。私だって、
 たまには、善いことも、していましたよ。
 何とか、お願いしますよ。男前の、閻魔様!」


「じゃあ、もう一度、裁判を、受けるがよい。
 6七日の裁判を、受けてこい。」

また、1週間歩いて、裁判。
また、1週間。とうとう、49日目になります。

最後の日、6つの、鳥居が、現れます。
どれか、一つを選んで、
歩いてゆくことに、なっています。


一つの鳥居は、天上界。
一つは、修羅界。
一つは、畜生界。

また一つは、餓鬼界。
そして、地獄。
残る一つだけが、人間界に戻る、鳥居です。


あなたは、来世、どこに生まれるのですか?


こんな話を、わずか3分でするのは、不可能だ。


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やっと、金閣寺です。
みなさん、カメラが、お好き。パシパシ撮ってらした。

突然、屋根の鳥を見つけて、お聞きになられます。


 「What's that?」


 「あれは、鳳凰だ。不死鳥だ。」


 「どこから、飛んで来たのだ?」


 「中国......... かな?」


 「やせて、スリムだね。」


 「閉門後、毎日、空を飛んで、運動しています。」



ここで、オペラグラスを携行していることを思い出して、


 「これで、一階に、鎮座している、義満公が、見られます。」

といって、サービス。

でも、あとで、気がついたのですが、
お客様の、カメラが、高級な、一眼レフの、
望遠レンズ付きカメラだったので、余計な、お世話だったかも。


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  【竜安寺

お客様、境内で、ご質問。


  「What's the most typical tree in Japan?」 
  (これが、日本の木だって言える木は、何?)


  「Oh,these weeping cherry trees that bloom
   in beautiful pink in spring are the
   most representative of Japan.」
  (この、しだれ桜ですよ。春には、ピンク色ですよ。)



「What are some of the trees that
 can be seen in other seasons?」
(春以外だと、どんな木?)

「In autumn, .....Oh, look at
 these maple-leaf-trees. They surely
 are the most typical in Japan.」
(秋ねー。秋・・、あ、これ、
 このもみじをご覧下さい。きっと、日本の代表ですよ。)


 「・・・・・」


  「Oh, because their color turns red.,
   whole scenic atmosphere turns red as well.」
  (だって、これが、赤くなるんだもの、
   全体の感じも、赤くなりますよ .)


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【石庭で】


 「Please close your eyes.and try to meditate
  until the rocks relate something to you.」
 ( 目を閉じて、瞑想してみましょう。
   石が、何か、みなさんに、語りかけるまで。)


山田、いねむり。


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つくばいの説明は、いつも通り、


「われ、ただ、樽を知る。」


酒飲みの歌だよ、と説明を・・・・するわけなーい。


「われ、ただ、足るを知る。」


という、禅の教えだと、説明しました。


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  【二条城にて】


   「お客様、駐車代、600円いただきます。」

   我らが、お客様、たいそう、ご不満。
   まるで、さっきの教えを、諭されたみたいで。

  (あなたね、高いガイド料金なんだから、
   それぐらい、あなた、出しておきなさい!
   あなた、足ることを知らないわね。)

   とにも、かくにも、あやまる。

 「I 'm sorry, I'm to blame for how high
   the telegraph pole and how red the mail box
   is,nothing to say of how heavy the cost
   this parking lot needs.」
  (すみませんです。電信柱が、高いのも、
  郵便ポストが赤いのも、ここの、駐車料金が、
  きついのも、みーんな、私のせいで。)

 門を入ったら、すぐ右手。
 ここで、GICSS研修での、おすすめのジョークを飛ばす。


  「はい、みなさん、
   パスポートを係員にお見せ下さい。」


 受けた!みんな、大笑い。


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 二条城で、いつも聞かれることが、あります。

 それは、


  「 What's the difference
    between emperor and shogun ? 」
   
天皇と、将軍は、どう違うの?)


 何か、ガイド試験の、
面接で、問われそうな、質問です。

 山田は、未だに、合格答案が、用意できていない。
 困ったものだ。

  「As far as the title is concerned,
   emperor is placed to
   higher position than
   shogun is.
   But actually shogun has
   much more power than emperor has.

   Originally, shogun
   (generalissimo) served as
  a top military command who fought
  against Emishi
   (northern different people).

   He belonged to emperor's army.
  Later,as shogun's power gained stronger
  and stronger, emperor remained
  sovereignty only by his title.

  Imagine your pet dog has grown bigger
  than your body,and the dog orders
  you to and not to do this and that !」

  ( タイトル的には、天皇が、上ですが、
    力は、将軍が上です。
    そもそも、将軍は、北方の蝦夷を討つ、
   征夷大将軍で、天皇の、軍隊の長でした。
後に、将軍が、力を持ちました。


想像してください。飼い犬が、
飼い主よりも、大きくなって、
いろいろと、命令するのですよ!)


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三十三間堂

 平均的に、お客様は、1OOO体の観音様よりも、
 その前に、ずらり、陣取った、鎌倉期の、
 二八部衆に、目が行くようです。

 いろいろ、尋ねられます。
 そして、そのあとで、彫像の下に、
 書かれた英文解説を、読まれます。

 そして、ときどき、聞かされるセリフは、


  「Oh, Yours coincides with this explanation.」
   (合ってるネ。あんたの説明!)


  そうなんだって。 やな感じ。

 「 Almost all of these 28 guardian
  deities are of old Indian origin,
  who later converted themselves
  to Buddhism. And belonged to
the 28 group of Kannon Guardians.」

( みんな、古代インドの神様で、
後に、仏教に、宗旨変えをしています。)


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ゴタの、旅程管理が、甘く、
銀閣寺を見学する時間が、
なくなってしまいました。

申し訳けありませんでした。
また、日本に、来て下さい。


午後1時45分、ホテルに帰って来ました。

「Thank you ! 」

「Thank you !」


⏁⏁⏁


暑い、暑い午後、きっと、銀閣寺は、
灼熱地獄だったことでしょう。


  山田 錦(ゴタ)