第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

山田 錦の【通訳ガイド日記 66】

2013年5月7日 (火)


   【ハイアット・リージェンシー・大阪】

  

  きょうは、地下鉄中央線に乗って、
  コスモスクエアという地下鉄駅に来ております。

  ここは、地下鉄中央線の終着駅。
  ここからニュートラムに乗り換え、二駅。
  中ふ頭駅で降りますと、
  そこには、大きなホテルがあるのでーす。

  その名はフジヤマ・・・ではなく、
  その名はハイアット・リージェンシー・大阪
  という、とても、長い名前のホテルです。

  その長い名前の通り、建物も長く、
  というか高く、天に聳えています。

  


   【午前9時】 

  きょうのお客様は、4名様。
  ウォーキング・ツアー。
  お名前は、パローレック・ティモシー様。

  アメリカは、ワシントン郊外メラランド。

  メラランド、メラランドって、どこや?

  そして、大統領保養地と聞いて、

   (何や、メリーランドやんか。)


  今、辞書で発音記号をチェックしているところ。
  確かに、 Maryland は

     [メアラランド]

  となっています。
  
  これを普通のスピードでしゃべると、

    「メラランド」

   と、聞こえるのでしょう。


   【京都へ】

  さっそく、ツアー開始。
  まず、ホテルのシャトルバスに乗って、
  コスモスクエア駅に行きます。

  ここは地下鉄中央線。近鉄線乗り入れなので、
  これに乗ったら、
  奈良でも行けるありがた~い乗物です。

  中央線は、昔の築港線
  築港というのは、大阪港のこと。
  ~コウは、港のこと。
  ただし、柴咲コウは港ではありません。

    (=⌒▽⌒=)


  だんだん、おかしなってきよった山田のおっさん。
  好きやねんてえ、このねえちゃんが。

  本町でおりて、乗り換え。御堂筋線で、淀屋橋へ。
  中之島に架かる淀屋橋は、
  豪商、淀屋が私費で架けた橋。
 
  淀屋は、江戸時代の大坂で繁栄を極めた豪商。
  ここ、淀屋橋では、主に米の取引がありました。

  商取引一般も、ここから、
  北浜にかけ、盛んに行われ、
  今も、北浜には、証券取引所があって、
  大阪の経済を牽引しています。


   【特急にのりましょう】

山田 : As Yodoyabashi station is a terminal,
     we can take a seat wherever we like.
     淀屋橋は始発でっさかい、座れますで。


  シートを向かい合わせにして、
  4人のお客様に座っていただきます。
  山田は、ひとり掛けに座ります。

     淀屋橋から、祇園四条まで、約50分の旅。
     ガイドは、パナソニックの工場が見えたら、それを少し。
     大阪城は、無視します。あれは、見えん。
     恥ずかしがり屋で。

   【祇園四条


    四条で、下車。
    すぐ、目の前に、阿国ねえさんが、刀もって、立っています。


      「おっほほほ。私が阿国だよ。
       出雲の阿国は。
       あんた、早く、説明しなさい。私を。」


    歌舞伎の説明からスタート。


ゴタ : Okuni in Izumo province
     originated stage art dancing called kabuki
     here in Kyoto.

     Her exact date of birth
     is not known except it was around 1572.

     Kabiki, literally means leaning a little,
       was a deviated style from
     the traditional one so far

     出雲の阿国がここ京都で、
     日本で最初に歌舞伎を踊りました。 
     出生については、謎で、ただ1572年生まれ
     だとしか知られていません。

        かぶき、とは、かぶく、(傾く)からの由来で、
        伝統をはみ出した、というほどの意味
        のようです。       
     
     This is the theater"Minamiza"
     to honor her great achievement. 
     これが、彼女の偉業をたてるモニュメント的
     存在の南座です。 

     「座」というのは、座席という意味の他に、
     (というか、本来は)楽市楽座の座であり、
      職業組合のことのようです。

     (英語での説明はしていません。)
     (職業組合の説明からすることになるので)

    
    【阿国の向かいには、井筒八つ橋本店】

     出雲の阿国ねえさんの説明が終われば、
     この阿国の見つめる先、「井筒八つ橋」
     に入ります。

     ここで、ゴタの家族なら、

      「抹茶パフェ食べてから、行こか。」

     となるところ。

     外国のお客様は、少し違う。
     抹茶パフェには、何のよろこびも、見いださない。

     一体、彼らの思考は、どのようなものか、想像してみるに、

      「ここで、時間を取られるのは、もったいないことだ。」

     貴重なお時間でございます。歩きましょう。

     歩きます。縄手白川で、東へ。

     ここから江戸時代にタイムスリップします。
    
    通りには、お茶屋が並んでいます。

    お茶屋とは何か?喫茶店ではない。
    コーヒーショップではありえない。
    まして、お茶の葉を売ってくれる店では決してない。

    うそだと思えば、一度、入って見給え。そして、

     「コーヒーをたのむ。」

    と言ってみよ。そこで、もしも、

     「へい、コーヒー、おまちどう。」

    なんてことになったら、
    私ゃ、直ちに、この場で、頭を剃って出家だ。

     お茶屋というのは、芸姑を呼んで、遊ぶ場所のことだ。

     料理は、仕出し屋から取る。

     そういう場所をお茶屋という。

ヾ(@°▽°@)ノ

   
      四条通りをはさみ、北の白川地区と、
      南の花見小路、どちらも、芸舞妓の
      歩くまち。
      ただし、CM撮影なんかで、カメラマンが、
      ニセ舞妓を雇って、撮影
      にくることがあります。
      これは、非常に迷惑な話だ。

      本来、観光地は、観光客のもの。
      決して、放送局のものではありません。
      なのに、たいていは、我が物顔で、
      平気で、通行止めにしたりして、
      撮影(という名の邪魔)をしてます。


       「お前の道か、ばか者。」


      と、おなかの中で、一発叫んでおしまい。

    【四条通りの辻利でお茶を買います。
                  こちら、本当のお茶屋さんでございます。】

パローレックさん : Gota san. what kind of tea
                                      do you usually drink ?
           ゴタはんは、
                                      どんなお茶をいつも、飲むの?

ゴタ      : I usually drink roasted green tea.
                          ほうじ茶です。

 

  パローレックさん、ほうじ茶をさがし、
  買い物カゴに入れます。
  普通の日本を体験したい、とおっしゃいます。

  (ゴタの生活を真似ても、普通じゃないのだが・・・)
      

  ゴタの生活とは、イカレポンチの生活ですのでね。
  フルーツポンチでも、抹茶パフェでもあらしまへん。

 

     【花見小路】

ゴタ : Look at the plate on which
     several names are written.
     This is a geiko and maiko dispatching house.
     このたくさん名前の書かれた表札をご覧下さい。
     これは、芸姑、舞妓を派遣する家です。

 

奥様 : Do they live here ?
     ここに暮らしているの?

 

ゴタ : Yes, they do. The mistress trains maikos
     to be a good entertainers.
     そうです。
     女将はんが、舞妓を
     一人前になるよう教えてますねん。

(‐^▽^‐)

 

   歌舞練場の手前、左の路地に入ります。
   ちょっと、ワクワクする冒険です。


ゴタ  : Look. This is a ladies' hairdresser
     specializing for hair- do of geiko and maiko.
     ほら、ここが芸姑や舞妓はんの髪結いです。

 


     【カジエ美容室】です。

  お客様、興味深そうに眺めていますが、中は見えません。       
   

      ( ´艸`)


  東山安井から、下河原通りへ。
  ここから、高台寺方面のウォーキングツアー。

  下河原を下がると、右手、
  すこし広くなった場所、ここが、元お風呂屋さん。
  向かいは、料理旅館「玉半」。この手前を東へ。
  ここが、石部小路。

  石畳の上を歩きます。
  今にも、舞妓さんに出会いそうな、一角です。

  だが、出会ったのは、外国人ばかり。

    「ハロー」、 「ハロー」。

  ここは、どこやねん。
  と言いたくなるくらい、外国人が増えたのであります。

      
      o(^▽^)o 
  
  石部小路を、「ねねの道」に出て、
  右折(南)、高台寺参道を横切り、
  

     【二年坂
  

  一年坂(一念坂)と近年名付けられた細道から、二年坂へ。
  この辺り、京風情が感じられる、とお客様は、お喜び。

      
  かんざしのお店がありました。

      (・∀・)

 

奥様  : What do they sell there?
      何のお店なのでしょ?


ゴタ  : They sell hair sticks.
      かんざしですな。


お店の人: いらっしゃいませ。

ゴタ  : ああ、外国の人なんで、かんざしは無理ですわ。

奥様  : I'd like to wear it.
      つけてみたいわあ。

お店の人: どうぞ。つけ方、ご説明いたしますよ。


   何と、実験用の人形の頭が置いてあります。
   髪の長さは、うなじが隠れるくらいの
   短い髪でOK。

   しぼって、付け根から、
   約4cmの空間をあけ、ねじります。
      
   ねじった中央部分に、かんざしを通します。
   通したかんざしを
   髪ごと、ぐるりと回転。
   そして、かんざしの先端を、
   今度は、頭髪の別の部分に突き刺し、固定します。


   通訳は、デモンストレーションでは、簡単です。

   とにかく、like this を繰り返していれば、いいのだから。

 

ゴタ  : Please ! It's your turn.      
      どうぞ。

お嬢さん: No need. Now I know how I put it on.
      ううん、大丈夫。覚えたわよ。


  お嬢様と奥様、それぞれ、かんざしをお買い上げ。

(^-^)/

      
  突き当たりの石段を登ります。
  何?エレベーターはありません。
  石段ですから、タクシーも登れません。
  あなたの足でしか、登れない。
  自力救済しかありません。


  ドラエモ~ンと叫べば、きっと、
  ドラエモンが
  竹コプターを貸してくれますよ。(うそ)
 

 

 

   【三年坂】 

 二年坂の次は、三年坂を歩きます。
 何?もう、疲れた?何?この次は
 四年坂があるのかって?
 ありません。
 もう最後だから、がんばりなはれ。


      
   【清水寺
 
 三年坂のしんどい石段を登り詰めますと、
 清水寺参道です。
 さあ、がんばって登りましょう。
 道はまだ続きます。

 清水寺への長い坂道。

     
 へなへな歩くこと10分。
 そこには、清水寺がありました。


ゴタ  : Which is better ?
      どっちにします?

みなさん: What do you mean ?           
      何が?

ゴタ  : Which do you think is better
      to take the steeper stone stairs or
      the soft stairs ?
      急階段にします?それともおだやかコースで?

奥様  : It's up to you.
      まかせたわ。

  

 それなら、楽楽コースを・・・・
 あれ?みなさんの視線は、急階段の方です。
 仕方がないわね。
 
 急勾配コースとなりました。
 ああ、ネコになりたい。
 ああ、竹コプターが欲しい。

 よし、ピッケルだ。ザイルをよこせ。
 よし、きょうは、ここで、キャンプだ。
 1週間後・・・に感じた30秒。
 仁王門まで、到着。

 

ゴタ  :  This is Niomon Gate.
       It was built in Muromachi period
       (around 15th and 16th century).        
       仁王門です。室町時代のものです。

       The two diamond wrestlers are ascribed
       to some of descendant family
       members of Unkei. The work bilt
       in late Kamakura,
       or the early 14th century.
       仁王像は、
       運慶さんの後裔の大工さんの作品です。


奥様 :   They look very strong.
       強そうなお方。

ゴタ :   Yes, they are ・・・・
      (strong in the night as well)
       はい・・・(夜のほうも)

     
    【濡れて観音】

  観音様の場所が変わりました。
  観音様が、勝手にこっちにお移りになったのかも。
  この像、濡れると、
  なぜだか、笑って見える、不思議な立像です。


ヾ(@^▽^@)ノ

ゴタ : Make your wish while she is smiling.
     笑うてはる間に願掛けしなはれ。

 

奥様 : I wonder what kind of wish I should make.
     どんな願いを掛けるのお?

 

ゴタ : World be always sweet to you for example. 
     みんなにやさしくしてもらえるように・・
     ・・・とか。   
 

 

   【随求堂】

  堂内は、随求菩薩のおなかの中だとされています。
  その体内に入るあなたは、菩薩から見れば、

  「あ、バイ菌が入ってきよった。どないしょ?
   虫下し飲んだろか?」

  なのですが、途中にある石をさすることで、
  ご利益が得られます。
  大随求菩薩の陀羅尼というお経を唱えながら、
  体内めぐりをすると、
  ご利益があると言われています。

  ところで、この大随求菩薩は、
  秘仏のため、見ることはできません。
 

 
   【子安の塔】

  普段、ここまで上がらないのですが、
  お嬢様の将来の安産のため、
  やって来ました。
  こちらから本堂を見ると、
  また素晴らしい光景です。
  ただし、ここで最後だから、登ったんだよ。
  坂道が多くて大変な清水寺です。

  その昔、「坂の上」
  という人が堂宇を建てたことと、
  この寺が坂の上にあることとは、
  因縁がありそうです。

  坂の上の田村麻呂の奥さんで、
  三善高子(みよしたかこ)さんが、
  出産を控えていて、
  病床にあったため、
  鹿料理を食べさせてあげよう、
  というので、
  田村麻呂さんは、
  この山中にやって来たのでした。  
  
  ところが、どっこい、延鎮に

  「これこれ。生き物を殺してはいけない。
   何?奥方のために、鹿の血が欲しいとな?
   ならぬ。そんな恐ろしいことを。
   よろしい、友よ。私が法力で、
   奥方の安産を叶えてさしあげよう。」

  それが、ご縁で、
  清水寺境内には、
  安産を祈念する塔、すなわち
  子安の塔が立っています。


    【アテルイ

  坂の上の田村麻呂の職業は、征夷大将軍
  と、いっても、幕府があったわけではありません
  東北征伐のための軍隊の長です。

  アテルイと戦った田村麻呂は、
  戦いの末、アテルイを捕らえます。

  田村麻呂は、アテルイの登用を、
  朝廷に願い出ますが、聞き入れられず、
  逆に、首を刎ねよ、と命じられます。
  
  アテルイとその朋友、モレは、その後まもなく、
  河内(大阪)で、処刑されました。


   平安遷都1200年の折、
   東北在住有志によって
  、ここに鎮魂碑が建立されました。


    【再び五条坂

   おみやげは帰路に買うのが、鉄則です。
   あの店、この店、キョロキョロとやっているうち、
   ふと気がつくと、

   あらー。 お嬢様がいらっしゃいません!
   えらいこっちゃ。どこ行きはったんや。
    
     「先に行ってしまったかも知れない。」

   ご主人は、先に行きました。
   ゴタは、ハプニングに気がついた場所で待ちます。
   奥様が、戻って探します。
   デカプリオさんは、最後に確認した場所まで
   探してくるといいます。

   誰が、正解だったか?
   答えは、デカプリオさん。
   八つ橋の店で、お茶をすすめられて、
   そのまま、お店の中だったようです。
   

      
   まあ、とにかくよかった。
   一安心したところで、ランチタイム。
   
   「三十六峰」に入ります。

   ここは、バス運転手には、
   割引きがあるのですが、ゴタはだめらしい。
   旅行会社との契約で、そうなっているらしくて、
   ゴタ、並びに、よそ者はだめ。
   
     「そんなこと、言いないな。」

     「でも、だめなものはだめ。」

   というわけで、一般料金をお支払い。何?
   ああ、そうそう、ごちそうさまでした。
   およばれになりました。

   ところが、ここで急に、お嬢様が、

     「私、先に帰ります。」

     「え?おひとりで?」

     「大丈夫です。来た道を戻れば、いいのですから。
      ギオン シジョウ でしたよね。駅は?」

     「はい、そうですけど。」

    
   ご主人も、奥様も、
   おトイレに立っている間の出来事でした。
   デカプリオさんは、たばこを買いに、
   売店に行っていました。
   うろたえるゴタ。

   お嬢様は、ひとりで、帰っていきました。
   何か、いやなことがあったのでしょうか? 

   さっき、はぐれたのと、
   何か関係あるのでしょうか?
    

   みなさんが戻って来られてから、お嬢さんのことを説明。
   お嬢さんといっても、デカプリオさんの、若奥様なのかも
   知れませんが、ここらあたりは、初対面ということもあるので、
   聞き出すことはできません。
    

奥様 : Oh, is it ? But that's okay,
     That's often the case with her.
     Don't worry.
     あら、そうなの。でも大丈夫よ。
     いつもあんなふうなんです。


   ご主人も、デカプリオさんも、戻って来られました。


   店内、たばこは、午後3時から解禁です。
   時刻もちょうど、3時。
   デカプリオさん、マールボロを一服、
   おいしそうに、吸っておられます。

   (´_`。) 


    藤棚で、6時間の案内時間が終了です。
    ここで解散です。6時間分の報酬を受け取りました。

    これで、終了なのですが、

ゴタ :  Do you have some other plans in mind
       to stay for a while here in Kyoto ?
      Or are you going back to Osaka ?
      大阪に帰られますか?
      それとも、まだ京都に残られますか?  
  
ご主人: We're going back.
     And you ?
     帰りますけど、ゴタさんは?


ゴタ  : I'm going back to Osaka, too.
       私も大阪に帰ります。


     結局、ここから、四条京阪まで、
     タクシーに乗りました。
     以下、京橋駅で、環状線に乗り換え、大阪駅へ。

     大阪駅桜橋口から、

     ハイアット・リージェンシーホテルへの
     シャトルバスが出ています。
   
     ゴタ、この乗り場まで、ご案内して、
     本日の案内業務を終了。
 
     ちょっと、お嬢様のことが気にかかりました。

     こういう場合、
     もっと適切な対処法があったのかも知れませんが、
     外国の方ひとり、京都で、放してしまうのは、
     ガイドとして、どうだったか、
     今もって、自問自答に明け暮れています。 


      

     おしまい
     ゴタぴょん