第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

ペルル嬢(35)(モーパッサン作品集より)


ペルル嬢(35)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【35】—————————————————

La  surprise  me  fit  dire:« Ah ! »  On  me  regarda,  
et  Chantal  s' écria   en  battant  des  mains: « C est 
Gaston.  C'est Gaston.  Vive le roi !   vive  le  roi ! » 

———————————(訳)—————————————————

 この驚きで私は思わず口から「えっ!」とこぼした.
みんなは私を見た.シャンタル氏は両手をたたいて叫び
ました.「ガストンだよ、王様は! 王様ばんざい!」


———————————《語句》—————————————————
    
battant:(p.pré) <battre (自他) 打つ、たたく
Chantal:ルイーズとポリーヌには改まった挨拶をする間
柄なので、ご主人か奥様のことでしょう.どちらなのか
は分からないので訳本をみてみました:
① モーパッサン短篇集(岩波文庫)シャンタル氏
② 全集(春陽堂)シャンタル氏

どちらもご主人として訳しておられるので従います.

 

ペルル嬢(34)(モーパッサン作品集より)

 
ペルル嬢(34)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【34】—————————————————

 J' ôtai   doucement   cet  objet   de   ma  bouche   et  
j' aperçus  une  petite  poupée   de  porcelaine   pas  plus  
gross  qu' un  harico.


———————————(訳)—————————————————

 私はそっと口からこの物品を取り出しました.すると
それはインゲン豆ほどの大きさの陶器製の小さな人形で
した.


.——————————《語句》—————————————————
           
ôtai:(単純過去1単)  < ôter (他) (物を)取り除く、
     片づける、どける、           
aperçus:(単純過去1単) < apercevoir (他) 見つかる、
     見えてくる、見える; 気づく
         本文は j'aperçus une petite poupée なので
    「小さな人形がみつかった…」で、apercevoir
     をちゃんと訳してもいいのですが、驚きを
     追加したかったので「するとそれは(何と)」
     としました.

 

『テレーズ・ラカン』(英語版)(1)

エミール・ゾラ
テレーズ・ラカン(英語版)(1)
 Therese Raquin

Chapter 1


————————【1】—————————————

At the end of the Rue Guénégaud, coming 
from the quays, you find the Arcade of the 
Pont Neuf, a sort of narrow, dark corridor 
running from the rue Mazarine to the Rue 
ded Seine. This arcade, at the most, is thirty 
paces long by two in breadth.  It is paved
with worn, loose, yellowish tiles which are  
never free from acrid damp.   The square 
panes of glass forming the roof,  are black
with filth.


—————————(訳)———————————————

河岸からやってくるとゲネゴー街の外れにポン・ヌフ
街のアーケードが見える.狭い暗い通路になっており、
マザリーヌ街からド・セーヌ街まで続いている.この
アーケードはせいぜいのところ長さが30歩、幅が2歩
といったところである.それはすり切れてがたがたで
陽に黄色く変色したタイルの敷石道で、どんなときも
酷いにおいのする湿気から解放されることはない.
アーケードの天井は四角い天井窓の枠にガラスが張られ
ているが煤けて黒ずんでいる.

 

————————⦅語句⦆——————————————

acrid damp:ひどいにおいの湿気.

 

 

ペルル嬢(33)(モーパッサン作品集より)

 
ペルル嬢(33)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【33】—————————————————

Aussi,   fus- je  stupéfait  en  sentant  dans  une  bouchée
de  brioche  quelque  chose  de  très  dur  qui  faillit  me
casser  une  dent.

———————————(訳)—————————————————

そんなわけですから、ブリオッシュを一口食べた中に、
何か固いものがもうちょっとで歯を折ってしまうよう
な感じがしたときは、たまげました.


.——————————《語句》—————————————————
                         
aussi:(接) それゆえ、だから
stupéfait(e):(形) あ然とした、仰天した、[de に]   
bouchée:(f) 一口(の量)      
brioche:(f) ブリオッシュ(丸い菓子パン)    
faillit:<faillir (自) 危うく~しそこねる  
casser:(他) 壊す、割る、折る、切る    
dent:[ダン](f) 歯

 

ペルル嬢(32)(モーパッサン作品集より)


ペルル嬢(32)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【32】—————————————————

  Au  dessert,  on   apporta  le  gâteau  des  Rois.   Or,
chaque  année,   M. Chantal  était  roi.   Était-ce  l' effet
d' un  hasard  continu   ou  d' une  convention  familiale,
je  n' en   sais  rien,   mais  il  trouvait  infailliblement
la  fève  dans  sa  part  de  pâtisserie,  et  il  proclamait
reine  Mme  Chantal.   

———————————(訳)—————————————————

 デザートの時間になり、公現祭のケーキが配られまし
た.ところでなぜか、毎年のようにご主人のシャンタル
氏が王様になってしまうのです.毎年偶然が重なった結
果のことでしょうか?それとも家族内での取決めがあっ
たせいなのでしょうか、私はそれについては全く何も知
りませんでした.しかし私は間違いなくソラマメが彼の
ケーキの中にあるのを見出していました.そしてシャン
タルのご主人はマダム・シャンタを王女として宣言して
いたのでした.
 


.——————————《語句》—————————————————
    
gâteau des Rois:(m) 公現祭のお菓子;
   このお菓子はパンやケーキなどで全員に配られ、
   その中に一つだけソラマメ(あるいは陶器の人形)
   が入っていて、それに当たった人が王様になる.
or:(接) さて、ところで、       
effet:(m) 結果
†hasard:[アザール](m) 偶然、偶然の出来事 
continu:(形) 連続した     
convention:[コンヴァンスィオン](f) 取決め、協定、  
familial, ale:[ファミリヤル](形) [男複]_aux; 家庭の
   家族の     
trouvait:(半過去3単) < trouver (他)  
infaillible:[アンファイーブル](形) 絶対に間違えない、
   確実に、誤ることのない;
   Mlle. Mitiko Daimon est femme médecin infaillible.
      大門未知子は失敗しない女医である.
infailliblement:確実に、誤ることなく  
fève:(f) ソラマメ     
pâtisserie:[パティスリ](f) ケーキ    
proclamait:(半過去3単) < proclamer (他)
   ~を…であると宣言する、布告する
reine:[レーヌ](f) 王妃、女王
   la reine Marie-Antoinette
   王妃マリー・アントワネット     

 

ペルル嬢(31)(モーパッサン作品集より)


ペルル嬢(31)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【31】—————————————————

  On  se  mit  à  table  comme  toujours,  et  le  dîner  
s 'acheva  sans  qu' on  eût  dit  rien  à  retenir.    


———————————(訳)—————————————————

 みんなはいつものように食卓につき、夕食は別段何
ということもなく終わりました.

 

.——————————《語句》—————————————————
       
mit:(3単単純過去) <mettre
   se mettre + 場所:[人が]…に身を置く
  se mettre à table / 食卓につく  
retenir:(他) ① 抑える、こらえる
    ❷ 記憶に留める 
    sans rien à retenir / 何も記憶に残すべきものなく
    sans qu'on eût dit / 言うことなく
    sans qu'on eût dit rien à retenir / 取り立てて何も
  言うこともなく
    sans que + 接続法:~することなしに
    とりとめもない会話は食事が終わる前の
  ことなので「接続法大過去」で表現されています.
  le dîne s'acheva sans + とりとめもない会話=
  食事終了(単純過去)+ 食事中の会話 (大過去)

 

ペルル嬢(30)(モーパッサン作品集より)


ペルル嬢(30)
モーパッサン作品集より
Mademoiselle Perle
Maupassant


——————————【30】—————————————————

   Dès  qu' elles  ont  commencé  une  phrase  sur  quel-
que  chose,  ça  roule,  ça  va,  ça  sort  par  dix,  vingt,
cinquante  idées  rondes,   des  grandes   et  des  petites  
que   je  vois  courir  l' une  derrière  l' autre,   jusqu' au  
bout  de  l' horizon.   D' autres  personnes  aussi  ont  des  
idées  pointues...Enfin,  cela  importe  peu. 


———————————(訳)—————————————————

こういう人たちが何かについて言葉を発すると、すぐに
その言葉は回転します.口から外へ出て転がっていきま
す.10にも20にも輪になって、大も小も丸い考えが、
次々と転がって、地平線の彼方へと走っていくのが見え
たりします.四角でも丸でもなく尖った考えの人もいま
す...結局はどうでもいいことですが.

 

.——————————《語句》—————————————————
         
elles:(人称代名詞) 彼女たちではありません.personnes
   を受けているので、「人々」.しかも発話者と読者
   了解の人々.つまり「考えが輪のように丸く回転
   する様に見える人々」       
sort:(直現3単) < sortir (自) 外へ出る、外出する、
   流れ出る        
pointu(e):(形) (先の)とがった