第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

山田 錦の【通訳ガイド日記 50】

4月7日 (日) 


   【ニューオータニ、午前11時】

  きょうは、大阪市内、
  お買い物ツアーのアテンド業務です。

  お客様、仰せには、


   「 お昼は、ラーメンを食べましょう。
     夜は、ミシュラン
    二つ星のお店よ。串カツがいいわぁ。」


  この、トレーシーさんの、
    リクエストにお応えするため、
  ホテルのマネージャーと、
      連絡を取り合います。

  

エンデ
ィさん : Oh Yamada san, We'd like to
      see the fish tackle shop first.
      あの、山田はん、わっしらは、
      先に釣り具屋に行きたいのですけど。



山田  : That'll be fine. Let's go.
      それはいいじゃないですか。
      行きましょう。



    第四ビル1階の、「1ban」 
    という釣り具店にご案内。

    エンディさん、リールをお買い求め。
    トレーシーさんも、
    よく、一緒に、釣りに出かけるのだそうです。
    トレーシーさんは、サウスポー。
    逆巻きリールをお買い上げ。

    え?

    見ていると、リール、ふたつどころじゃありません。

    6箱お買い上げ~。

    その他、ウインドブレーカー数点、グローブ数点、
    テグス・・・・お店、開けそうヨ。


    お支払い総額、27万円也。


    店員さん、全部、商品を袋詰めして、手渡します。
    ここで、ゴタ、ひとこと言ってやった。


    「あんたなぁ、30万円近い買い物やで。これ。
     ちょっと、何か、感謝の気持ち込めて、
     サービスしたら、どないやねん。」


    「私では、わかりませんので・・・」


   「わかる人に連絡して!」


エンデ
ィさん : Yamada san, That's okay. That's okay.
      We need not extra.
      山田はん、もうええ、もうええ。
      そんなこと、ゆわんとき。


  ということで、


    「 もう、ええわ。まけとったるわ。
            もう、店長呼ばんでもええ。」


 と、言ったとき、店長がおでまし。
 おみやげ、ふたつゲット。 

   (あほ、もっとよこせ。27万円の客やぞ。)  
   
       


  【大丸・そごう】


  心斎橋に移動。大丸百貨店と元そごう
  (こっちも大丸になってます)に行きました。

  さすがに、こちらのエルメスは、品切れ。
  ブラック・バーバリでお買い物。


   近くに、

「コムデ・ギャルソン」

 のお店があります。

 お立ち寄り~。


 こうも、付き添い仕事をしていると、
 段々、退屈になってくる。
 段々、どうでもええようになってくる。

  (もう、はよして、終わりなはれ)

という気持ちにもなるし、


 (いやいや、早う終わられたら、困る。)

ゆう気持ちもあるし、複雑諭吉、金はほしいが、
仕事はあきた。あ~、退屈。


世の中には 以心伝心 というものがあって、
たとえ、言葉に発していなくとも、
伝わる気持ちというものがある。


トレー
シーさん : Yamada san, Let's have a lunch after this.
      We'd like to eat ramen noodle.
      Do you know the good place for that ?
         
      山田はん、このあと、食事にしましょうよ。
      ラーメン食べたいのだけど、どこか知ってる?


     山田の知ってるラーメンは、「天下一品」やけど、
     これは、かなり個性の強い味なので、
     鍛錬できていない外国人には、無理かも。

     そう思って、ホテルのマネージャーに問い合わせ。


マネー
ジャー: 山田さん、そしたら、

     「一風堂」さん
  
    にお連れすれば、どうでしょう?



  ラーメンの

    「一風堂

  これはいい考えである。決まり。


    【一風堂

 山田、豚骨スープ味に、太麺で注文。
 その後、ご夫婦の通訳に廻る。

   「たまご」

 を別に注文。
 さらに、あれも、これも、全部別注文。

 そして、出て来たラーメンは、
 その別注文したはずの、
 具材が、全部、ラーメンの中に入っていた。

 もちろん、ゴタの注文した、素朴なラーメンには、
 てんこ盛りの具材が載っかっていた。


山田  : あのー、こんな注文
      しなかったよ。どうすんの?


店員さん: すみません。すぐに、作り直します。


   そのとき、トレーシーさんが


トレー
シーさん :  That's okay.
                    That's okay. Okay with us.
      How about you ?
      Is that okay with that ramen for you ?
       
       いいじゃない、いいじゃない。
       私たちはこれで、いいわよ。
       山田はん、どう?いい?
 

山田 : Of course okay
                  if you are happy with it.
     もちろんいいですけど、
                  おたくたちがよければ。


エンデ
ィさん : Then,  that's okay !
                じゃあ、いいってことだな.

   かくして、お店は、作り直しの憂き目を免れました。
   山田は、たくさんのトッピングの具を獲得しました。 
 

   心斎橋エルメスに立ち寄りましたが、そう、柳の下に、
  ドジョウはいません。
  カエルもいません。 


     「日程表では、午後は・・・・・」、


  言いかけたら、ご夫妻、


  「 Yamada san,
    Go back to the hotel please. 」
   (山田はん、ホテルに戻ってたも。)


 ビクッ、とした山田。何か、落ち度があったか?

      
  「 No, I just want to take a little rest
   and change suits to prepare the dinner.」
      

 ( 何もご心配なく。ちょっと、中休みです。
  夜の食事の着替えもしたいですし。)
   
       
    【夜の食事とは、法善寺横町


 ホテルに戻って、約2時間の中休み。
 食事場所は、すでに、マネージャーさんが、
 予約を取って下さいました。
 ただし、そこは、2つ星ではなく、
 ひとつ星レストランなので、
 お客様の了解を得て下さい、とのこと。

 それは、大丈夫。
 当日予約なんて、
 予約の内にはいらないと、
 説明すれば、いいのだ。

 それより、この空白の2時間、ちゃんと、
 ガイド料金をつけてくれるのだろうね?


 午後6時30分。ご両名登場。

 再度、市街地に向けて出発。

 場所は、月の法善寺横町、本通り。

     
 車は、千日前通り、赤髭薬局店前に着けます。

 ここから、法善寺参道の、
 一筋北の通りまで、行って右折れ。

 その右手にある串カツ料理店。
 ここが、ミシュラン一つ星レストラン。

 
   【WASABI】

その店の名は「ワサビ」。

午後7時、入店すると、満席。


 「 どちらさまでしょう?
   はい、トレーシー様、伺っております。
   少々、お待ちいただけますか?」

待っている間、
ご主人のエンディさん、おトイレです。
場所を聞くと、


  「 お二階になります。」

そう言われて、
エンディさん、おひとりで、二階へ。


  ヾ(@^▽^@)ノ


そして、用事をすませ、
降りて来られました。


エンディさん:  Yamada san,
                      There is a table nobody sits at.
                           Please ask
                           if we can take that table seats ?
  
         山田はん、二階、席があいてましたで。
                           その席にして、もう座ってええか
         聞いてもらえます?


    ということで、お店の人に聞いてみた。

    そしたら、


      「 その席は、予約なので、
        だめなんです。すみません。」


    だって。

    だんだん、また、ムカムカしてきたゴタ。


       「 おたく、それ、どういうことですねん。
                    私らは、予約してましたやないか。
        予約ちゃいますのか、私らは?」    


      「 すみません。申し訳ございません。」



   エンディさんが、なかに入ります。


    「  Okay. That's okay with us.
                    We have a lot of time.
                   No need to hurry.」
     ( いいよ、いいよ。       
                  時間はなんぼでもあるんやし。急げへんよ。)  


    ヾ(@^▽^@)ノ

  まあ、ちょっとしたことで、
       カッカと怒るようでは、
       エンディさんのようなお金持ちには、
  なれないのでしょうね。
  ちょっと、見習うべきか。


    【教訓】

  金持ち、けんかせず。 
 些細なことで、腹を立てるな。金持ちに
 なりたければ、柔和な心が大切じゃの。
 エンディさんや、トレーシーさんのように。


 さて、午後7時20分。
 無事、おふたりさんが、お席に着かれ、
 ご注文の通訳を終了したところで、山田、退出。

   (=⌒▽⌒=)

 この間、ゴタも、別場所で、食事です。
 当然1000円以下の店。
 松屋かどこかを探しているうち、

   「はり重」

 にやって来ました。


  ( まあ、ここでええか。
    日曜日の夜、どこも満員。
    さっさと食べて、ハイヤーの中で休もう。)


   「はり重」で、ビフカツカレー

(900円)を注文。今夜の山田の食事です。

  なかなか、よかったヨ。おすすめ!

   ヾ(@^▽^@)ノ


  「 午後9時には、
    もう、出て来られるでしょう。」


 ドライバーさんに、
 そう言ったのは、午後8時30分。

 あれから、時間は過ぎ、只今。午後9時30分。


   「 どないなってんねん。」

 ちょっと、のぞきに行くことにした。


 法善寺と寿司屋との路地から
 その店の裏手に出られます。

 膝元の高さに、細くのびたガラス窓から、
 店内を、そっと、見渡すことができます。


   ( うーむ、お客様、
    ご機嫌のていたらくで、
     会話がはずんでいるご様子。)
     

 もう、30分ぐらいは、かかりそうである。
 車に戻り、ドライバーさんに、経過報告。


  「 あれ? ドライバーさん、お食事は?」


  「 いえ、私はいいんです。」


  「 え、大丈夫なんですか?
   コンビニで何か、買ってきましょうか?」


  「 いいんです。ほんとに、おかまいなく。」

     
  このとき、ようやく電話。

  トレーシーさんからです。


トレー
シーさん : Hi Yamada san.
       We've almost finished the meal.
       Please come over.
       ( もう、食事終わりますので、
        いらしてくださいな。)


 行ってみると、
 隣に座っていた日本人カップルと、
 すっかり仲よくなっていて、
      
    
    「 この人たちの分も、
     お近づきの印に、食事をおごりたい。」

 と、言います。
 
 その日本人カップルは、天神橋で、
 小料理店を経営する若夫婦で、
 きょうは、定休日(日曜日)で、
 ここに遊びがてら、食事に来たとのこと。

 それはいいのだが、やはり、
 ミシュランの推す高級料理店のこと、
 食事をおごるといわれても、
 今しがた知り合ったばかりの人から招待を受けるには、
 抵抗がある。


 これをいかに、スムーズに解決するか、
 こんなところまで、通訳ガイドの仕事かいな?

 説得しやすい側に、つくことにした。

 で、

 日本人(藤沢さん・・・だったかな?)夫婦の方を、
 言いくるめることにした。


  「 あのね、この人たち、
   何度も、日本に来ているんですけど、今夜始めて
    あなたがたと、お友達になれて、
   おおよろこびなんですよ。
   どうか、気持ちを汲んでやってもらえませんか?」


  「 それじゃ、こうしましょう。
   今度、日本に来たら、
   必ず、声をかけてくださるように。
   そのときは、私たちが招待するのよ。」


それで、ようやく両者、納得。


気前よく、全員の分をお支払いになって、
お店の方も、恐縮してしまい、

山田に、


  「 きょうは、ほんとに、すみません。
    どうもありがとうございます。」

  
  「(いや、金は私が出したのではないので・・・)
    どういたしまして。」

 
  長い大阪の夜は更けゆくのでした。
  きょうも、午後11時、

  ようやくホテルに帰還です。
  報酬金には、色が添えられていました。
  もちろん、
  空白の2時間分も引算なしでした。
    ドキドキ
 
  明日は、午前10時30分迎えとなりました。

    おしまい
    山田 錦