第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

山田 錦の【通訳ガイド日記 9】

2010年 8月31日 (火)



通訳ガイドには、観光のお客様を
案内する仕事ばかりとは、限りません。

ときには、
新人ガイド研修で、教えられたのは、少なくとも、

① 観光通訳ガイド
② 企業通訳(工場見学、商談、etc)
③ 会議通訳、イベント通訳
④ エスコート

などがあるとのこと。

でも、自分には、観光ガイド以外の仕事は、
来ないだろう、と思っていたものですから、
昨日の、電話には、びっくりしました。

ヾ(@^▽^@)ノ

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昨日。

夕方、4時頃、神戸の、
ANAクラウンプラザホテルから、電話です。


 「私、ベルの、植山です。実は、お客様が、
  企業通訳を探しておられるのですが、
  受けて、いただけるでしょうか?」


(ガーン。。。)

しかし、一回でも、日銭になれば、行くのが、当然。
非力を顧みることなく、ふたつ返事で、承諾です。


 「はい、お受けいたします。」


 「では、お客様に、代わります。
  直接、お話下さいますでしょうか?」


 「はい。」


 「∮⊕♀∞♂∀⊋⌆⧻⋚∴√∋≈∂∇ℏЖ、Do you understand ? 」

 ペラペラペラペラ、ペチャクチャペラペラ。わかります?


 「ノー。」
 わかりましぇーん。


 何か、わかりにくい、英語です。
 たじたじで、受け答え。おっしゃることは、
 要は、船の積荷の、照合をするときの、
 通訳をして欲しい、ということらしい。


 「Alright. ...Aha.  .Okay... Certainly .....Accepted.......」
 (はい、えー、そう、わかりました。)


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 ヾ(@^▽^@)ノ
船

というわけで、やって来ました。
神戸は、三宮。ホテルのロビーで、待つこと、10分。



 【企業の方ですので、匿名です。あしからず。】 


「Mr. Carpentain, I presume ? 」
 カーペンタインさんですね?


「Yes, I am. And you must be Mr.Gota.」
 そうです。
 じゃ、あなたは、ゴタさんですよね。


「Yes, I'm Gota. Nice to meet you , Mr. Carpentain.」
 はい、ゴタです。はじめまして。


「Nice to meet you ,too. Mr. Gota.」
 はじめまして。


⏁⏁⏁ ヾ(@^▽^@)ノ


打ち合わせは、簡単にすませ、とりあえず、
港へ、行きましょう。ということで、
ホテルの前から、タクシーに乗ります。


 【タクシーの中で】


 「ゴタさん、上着を着ていては、暑いでしょう?」


 「はあ。」


ゴタは、初めての、企業通訳を、何か、オフィスで、
する、きれいな仕事だと、
勝手に、思い込んで、いたのです。

これが、この、30分後に、
大きな間違いであることに、気がつくのである。


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 【地名も仮称です。あしからず。】


メリケン粉埠頭に、到着。

コンテナが、ずらり並んだ、桟橋。
プレハブの、事務所が、あります。


丸玉海運KK 【仮称】 


この事務所の2階に、通されました。


「はじめまして。大阪から来ました。ゴタです。」


所長のエビマヨさん【仮称】に、ご挨拶です。



「ああ、あなたが、きょうの、
 通訳さんですね。よろしく、お願いします。」


そういいながら、エビマヨ所長は、
ゴタに、ヘルメットを手渡すのです。

このときの、ゴタ。目は、点に、(  ゚ ▽ ゚ ;)
なっていました。

声は、あの吉本新喜劇の末成さんの、


「ひっ。」


と、いう声。

夕べ、何を着ていこうかしら。
黒色の上下スーツと、ネクタイは、
ドルチェ&ガッバーナで、行きましょうか?

ひとり、悩んでいたのですが、

ああ、正解手は、Gパンと、Tシャツだったようです。

時刻は、8時30分。


「Then, let's get started.」

では、行きましょう。

と、おっしゃるカーペンタインさん。

やや狼狽気味に、ついて行くゴタ。


(どこまで、行くの?どこまで?)

ひとり、呟くゴタ。

着いた先は、どこでしょう。

着いた先は、つい先ほど、
タクシーの窓から、見ていた、コンテナでした。


(ひぇー、まさか!)

その、まさかの仕事が、はじまります。

コンテナの前。

依頼者のカ-ペンタインさんは、
コンテナ13基の、荷主さんです。

ブラジルに、本社を持つ、総合商社で、
機材の買い付けを、
ここ、日本でなさっている、というわけです。


そして、このコンテナを、神戸港
から、サントス港まで、
船荷で、送るのが、丸玉海運と、いうわけです。


ヽ(゚◇゚ )ノ

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ふと、後ろを見ると、ドラム缶の山。

その、ひとつ、ひとつに、番号が、付いています。

3078,3304,3556,・・・etc.

カーペンタインさんの手には、
その数字と記号の付いた伝票が、あります。

何の、ドラム缶かな?

ごちゃごちゃ、わけのわからない、
記号に並んで、grease、と書いてあります。


 「下に敷かれた、木枠パレットも
  一緒に、積み込まれるのかな?」


カーペンタインさんは、そう尋ねます。


「さあねえ・・・」


ボケーとしているゴタに、


 「早く、日本語に通訳しろ」、


と、檄が飛ぶ。


あ、そばに、丸玉海運の、主任さんが、いた。

もう、仕事が、始まっている。

この人と、依頼人との間を、通訳します。


   「パレットごと、積むのですか?」 

と、山田。


   「いいえ、パレットは、積みません。」


 と、主任のシャボンさん。【仮称】



山田、通訳開始。

    「No, palettes remain here. 」


カーペンタインさん、

   「That's what I thought.
    They don't lay
fumigant on them , do they?」


山田、さっそく、詰まる。

タイムを取って、電子手帳で、fumigant を調べる。
あった。燻蒸(くんじょう)剤。

あったけど、日本語が、わからない。そのまま訳す。


「やはり、パレットは、積まないですね。
 パレットには、燻蒸されていないのですよね?」


「そうです。」と、シャボン主任。


「No.」と、通訳。(あぶなかった。Yes と言いかけた。)


今度は、主任さんから、カーペンタインさんに。


 「ドラム缶は、4つのコンテナに、積み込みます。
  一つのコンテナに、80個ずつ、
  3つのコンテナに積み、
  それで、240個。
  残りの40個のドラム缶は、
  4つ目のコンテナに、入ります。」


山田、通訳。


「 They are loading 80 drums into one container.
  Next 80 go in the next container.
The third 80 go
  into the third container.
And the last set of 40
goes into the 4th container.」


ここに、監督の、ガンモドキさんが、
作業工程を説明しに、来ました。曰く、


 「この、ドラム缶の積み込みと、
  同時に、向こうにある、
  器材と、スチールを、
  9基のコンテナに積み込みをします。」


山田、通訳。


 「They are starting to load the
  9 containers over there
 with materials and steals right now at the same time
 with this loading of these drums. 」


カーペンタインさん、応答。


「ペラペラペラペラペラ。」


山田、わかったところだけ、通訳。


「こっちは、チェックが、
私ひとりなんだから、同時に、
積み込み作業をされては、
出荷点検が、きっちり出来ない。」


主任さん、返答して、


「 契約では、出荷作業に、支障のない範囲内での、
点検を行う、ということですから、
同時作業を、止めることは、
出来ません。ご理解方、よろしく。」


山田、訳して、

「They are loading at two places at the same time
according to the contract.
So they want you to understand this.」


【これが、英語の試験での、英作文なら、完全に、不合格!】

(・・;)


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それから、作業は、延々と、続きました。

作業の合間に、カーペンタインさんは、
通訳に、必要な、事項の説明をしてくれます。


積荷に使われる木枠には、焼き印が、押されています。

カーペンタインさん、このブランドを、

「Hit treatment」

だと、いいます。

(打たれた、扱い?)

よく聞くと、防虫処置だと、言います。

ああ、なるほど、

(Heat Treatment ね。)

山田、リスニングをもっと、練習しなくては。


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お昼休みです。

主任さんが、丸玉海運のワゴンに、我々を乗せて、
ドライブに、連れて行ってくれました。
行き先は、ポート・アイランドの


神戸学院大学」です。   【これは、実名】


ここの、学食が、一般開放されています。

めいめいに、好きなものを注文。

支払いは、丸玉海運の所長から、お金が出ていました。

「ありがとうございました。」

この場を借りて、お礼申し上げます。


ところで、神戸学院大学の食堂は、
海の眺めが、いいですよ。最高!
我が子を大学にやるなら、この大学!

(私は回し者じゃないよ。)

主任さん、英語が、流暢です。
アメリカに、留学されていたとか。
なんで、私が、雇われたのだろうと、思うくらいです。

カーペンタインさんは、一昨日まで、
横浜の港で、出荷点検の仕事をなさっていたとか。
あさって、東京に、移動なさいます。
あす、休暇だというので、
神戸の、観光スポットを、ゴタと、主任さんとで、PR。

まず、一番に、話題となったのが、

Ijinkan foreigner's residences (異人館

それから、

Suma Aquarium (須磨水族館)

Maya Park on top of Mt.Maya ( 摩耶公園)

肝心の、言い忘れていた場所を、
今頃、思い出しました。ははは、それは、


Suma Detached Palsce (須磨離宮

でした。

ヾ(@^▽^@)ノ


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午後からは、英語に堪能な、主任さんが、
カーペンタインさんに、付きっきりです。

山田、焼き餅。


出荷のトレーラー・トラックが、来ました。
これを、ブラジル行きの桟橋に、
運んだら、業務終了です。


ヽ(゚◇゚ )ノ

午後2時30分。業務終了。


I’m sorry I was not very helpful to you today.
(お役に立てず、すみませんねえ。)

といったら、カーペンタインさん、気を遣って、

You were very helpful and most of service to me .
My company feels it is necessary that
you join us whenever there is a loading check.

(よくやってくれましたよ。
会社も、あなたが、今後も必要だと、
思っています。また、来てもらえますか?)


Of course I'd love to.(もちろんです。)


今度は、真夏以外で、お願いしたい。
でも、まあ、何とか、最後まで、やった。

人生で、初めての、ええ加減な、ゴタの企業通訳でした。


ヾ(@°▽°@)ノ

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新人通訳ガイドのための研修テキストの、1ページで、

企業通訳(工場見学、商談、etc)は、
下記の通り、追加を提案します。


① 観光通訳ガイド
② 企業通訳 (工場見学、商談、ヘルメット付き港湾作業通訳、etc)
③ 会議通訳、イベント通訳
④ エスコート

おしまい。

山田 錦(ゴタ)