第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

山田 錦の【通訳ガイド日記 71】

2013年6月3日(月)


 午前9時30分

  【ANAクラウンプラザ。車寄せ玄関】


ドアマン : すみません。
       お宅が、9時30分にお迎えの
       山田タクシーさんですか?


   また、山田をタクシーと勘違いして、
   ドアマンに伝達が行ってしまっているのだな。
   まあ、ゴタの職業は、特殊過ぎて、
   ホテル側も、分類に困るのだろうなあ。

   普通、通訳ガイドは、添乗員として、
   扱われるのだが、山田のように、
   個人プレーをするガイドというのは、
   とりあえず、タクシードライバーとして、
   認識されるようだ。

   仕方がないので、通常のお迎えタクシーとして
   車内待機となった。

   しばらくして、


ドアマン : 運転手さん、お客様が出て来られました。


山田   : あ、そうですか。はい、では。


  
   山田、車から降りて、名刺を差し出して、ご挨拶。

   きょうの、お客様は、ポッターさんご夫妻です。
   北欧系のご主人と、アジア系の奥様、
   ともに、言語は英語。流暢で、自然な英語です。
   おそらく、母語なのでしょう。

   きょうの観光は、京都市内観光、8時間コースです。

   山田のガイドは、
   基本は、ウォーキング・ツアーです。

   これに、お客様のご要望に応じて、
   タクシーもしくは、レンタカーを利用します。
   きょうは、レンタカー。

   午前9時30分、出発。
   コンシェルジュさんが、お見送り。


     【阪神高速へ】

   出発が午前9時30分、
   戻り指定時間が、午後5時30分。

   なので、8時間といっても、
   往復所用3時間を差し引くと、
   京都で、過ごせる時間は、
   わずかに、5時間。

   と、いうことは、時間は貴重。
   すぐに、阪神高速に上がりました。
    

    阪神高速環状線東大阪線近畿自動車道
    ~第二京阪阪神高速京都線

  
   このルートで、かろうじて、
   1時間で、河原町十条に着けることができます。


奥様 :  Mr. Yamada, Would you take us
      today to Shokokuji Temple ?
       山田はん、私らを、きょうは
     相国寺に連れてって、もらえまっか?  
    

山田  : Shokokuji Temple near
      the Doshisha University ?
      相国寺って、あの
      同志社大学のそばの?

奥様  :   Yes, I think so.
      Oh, Please. Look at this.
      ええ、そう思います。
      これなんですが。

 

  奥様、スマートフォンの画面を、ゴタに示します。
        
   Sokokuji Temple. Turn to the north at
   the traffic light between two precincts
   of Doshisha University along
   the Imadegawa street.

  ぱっと見せられても、ゴタの日本語で、
  構成された脳みそには、長い英文は、
  一瞬には、把握できません。

とりあえず、相国寺と、同志社だけが、
目に入ったので、とりあえず、
場所は合っているのだと、確信。

ヾ(@°▽°@)ノ


山田  : Which would you like to go first,
      that Shokokuji Temple or
      the Nijo Castle as scheduled ?

      どっち先にしましょ?
      その相国寺へ先に行くのんか、
      それとも、予定通り、二条城
      に行くのんか?


  ご夫婦、ボソボソ、ご相談。そして、


奥様  : Leave it to you.
      おまかせね。


  河原町九条で、任せられては、左折でしょう。
  だって、真っ直ぐ行けば、河原町
  四条の混雑ゾーンを通過することに
  なりますから。

  堀川通りまで、進んで、右折。北へ。
  京都駅を通過。この堀川通り沿いに、


     「西本願寺

 
  があります。
  ガイドなら、
  この寺の説明は無視できません。

  知らん振りして、通り過ぎようとしても、


ご夫婦 : What's that, Mr.Yamada ?
      山田はん、あれ何どす?


  あれは、西本願寺である。
  西、というからには、東がある。
  堀川通りのひとつ東の
  大通り、「烏丸通り」に面して、
  広がる本願寺を、東本願寺という。

  もともと、ひとつの寺、

  「本願寺

  であった。

 本願寺の起源は、親鸞の遷化に遡る。

 親鸞の末娘、「覚信尼(かくしんに)」が、
 親鸞の遺骨を京都の吉水
  (今の東大谷本廟辺りか?)に移し、
 1272年に建てた「大谷廟堂」に始まる。

 1592年、顕如が亡くなると、
 長男、教如が継いだが、
 准如への譲り状が見つかり、
  教如は、引退。

  1602年、徳川家康は、烏丸六条に、
 地所を与え、教団を二分。
 このときより、

   「西本願寺」 と 「東本願寺

  が生まれたことになる。

  が、お客様には、ただ、浄土のお話だけを
  簡単にご説明するに,とどめます。


山田 : The temple belongs to a pure
     land sect of Buddhism.
     According to the dogma,
     there is a Amida Buddha
     land west of our world.

     We are supposed to travel
      there after our death.
     We have to go there on foot.
     So after your death,
     your body will be put on
     with shroud and
     at your leggs with gaiters
     so that you can walk on long
     journey.
     You have to travel as far
     as hundreds and thousands
     of countries long
     way on foot.      

     寺は浄土信仰です。教義では、
     西の国に阿弥陀はんがいまして、
     我々は死んだら、そこへ、
     歩いていくことになってますのや。

     死んだら、経帷子着せられて、
脚絆つけられてな。
西方十万億土を旅するのでっせ。


   
    【二条城】

山田  : お客様、車を止めにいきますから、
      すみませんが、そこで、
      入城券を買って待って
      いて下さい。(と、英語で言った。)

お客様 :  ゴタさん、あんたの分も,
      買うておきまひょか?(と英語で答えた)


山田  : あ、わての分はええのだす。
      もってますさかい。(と英語で説明)


何?ホンマに英語使うたんか?ほんま?

  山田: ほんまやて。

  声 : ほな、英語でそれ、ゆうとうみ。

  山田: いやな声!Would you kindly please
      buy your tickets while
      I go and park the car?

  山田: こんでええか?

  声 : あかん。お客さんの返事もや。
  
  山田: お前は~。 Mr. Yamada,
      Do we buy three tickets ?
       どや?

  声  : ほんで、おまはんの、返事もや。


  山田 :この、バカ声。 
      Buy just for two of you.
      I have my own.     
      こうゆうたんじゃ。 

あ、このあと、何書くか、
忘れてしもた。どないしょ?

ヾ(@^▽^@)ノ


   入り口のところで、誰かが、
   山田に握手を求めます。

    (あれー。山田も有名人になったのか?
           ・・な、わけないがな。)

    先輩のエンディさんでした。


    二条城に入ると、先におトイレに行きました。
    なぜって?がまんしてたからだよ。

    男のトイレは早い。
    ゴタとご主人は、寄付金コーナーで、
    楽しいバッチを見つけました。
    タカの絵を描いたバッチが、
    ご主人のお気に入り。
    さっそく、200円を寄付して、
    それをもらおうとするが、
    あいにく、サイフのひもは、
    奥方が握っていらっしゃいます。
    
    しばらく待って、
    買って (?) 
    
   ( 正しくは。寄付をしてそのお礼に) 
       もらいました。  


   【二の丸御殿】


   よく、お客様に聞かれることの、
   ひとつに、

   「御殿ですか?
    でも、ここはお城でしょ?
    宮殿じゃありませんよね。」


   そして、いつも、この質問に降参するゴタ。

   きょうも、その質問の大砲は
   山田に発射されました。 
   ドッカ~~ン。


   まあ、おそらくは、一時、
   天皇さまがお入りになられたので、
   こう呼ぶならわし   
   なのだと思います。  

 

   【相国寺

  烏丸今出川を東へ。
  次に見える信号の手前左側が、
  四大。
  ここに、新島襄の胸像がある
  (らしい)。
  見たことありませんが・・・。
  信号の向こう左が、女子大。

  残念ながら、向こうまで、行かない。
  その信号を左折。
  正面の門が、目的地、相国寺です。

  広い広い境内です。
  なにしろ、相国寺は、曾て、
  五山のひとつに列せられた禅寺です。
  五山って、知ってはります?

  みなさんの中で、
  京都検定を受けられる方、
  いらっしゃいます?
  
  出そうな問題です。
  ウキペディアによると、

 南禅寺 - 別格
 天龍寺 - 第一位※
 相国寺 - 第二位※
 建仁寺 - 第三位
 東福寺 - 第四位
 万寿寺 - 第五位

  ※は、足利義満のころ、第一位と第二位が
  入れ替わったことがあるという印です。
  
  相国寺の、相、とは、
  ここのお坊様の説明によりますと、
  「助ける」という意味。

   国を助けるという役目
   のお寺なのだそうです。

   でも、どうでしょう。
   微妙なもので、応仁の乱のときには、
   東陣が置かれた場所でも
   あります。

   こちらは、細川勝元の陣。
   これに対し、西陣は、山名宗全

   相国寺といいますと、
   天井の龍の絵が有名です。

   こちらは、鳴き龍と言いまして、
   手をたたくと、反響がいつまでも、
   鳴り響き、まるで、龍の鳴く声のようだ、
   というところから
   
    「鳴き龍」

   と、名付けられています。


   鳴き龍の「法堂(はっとう)」から、

   「開山堂」へ。

   南に面する庭は、枯山水です。

   みなさま、およそ、禅寺というものは、
   本堂、開山堂、など、
  およそ、禅修行をする堂宇の
   南側は、枯山水様式を取り入れております。

     な~ぜじゃ?

  修行僧は、南に向いて、禅を組みます。
  このとき、水面が揺れては、
  気が散って、禅定の
  妨げとなってしまいます。なので、
  水の代わりに、砂利を水に見立てて
  熊手で、水面の波を描きます。

  水が枯れた、というわけで、これを枯山水と呼びます。

  もうひとつ、特色がありまして、花頭窓。
  これは、本来、火頭窓と書きました。

  我々ガイドは、bell-shaped window などと、
  ゴマ化しておりますが、
  正しくは、炎の形をした窓、
  と説明しなくては、なりません。

  電気の無かった時代、せめて、
  形だけでも、炎のように、
  明るい窓がいい。

  心頭滅却すれば、火も涼しいのだから、
  窓を、明かりと見れば、また明るい。
  と、思った・・・
  か、どうかは、知らない。(すみません。)


    開山堂から、風呂場へ。

  ここの風呂は、ざぶっと、
  湯につかれるようなお風呂ではありません。
  湯を洗面器に汲んで、身体に掛けるだけ。
  素朴なお風呂です。 
  
  
  ご友人はとうとう現れませんでした。
  ダウンタウンに移動することになりました。

    
      【河原町四条】

  京都で、ダウンタウンと言えば、
  河原町のことであります。
  三条から四条辺りが、

   most prosperous area

  というわけで、

  車を御幸町六角のPに駐車して、
  歩きました。

  姉さん六角タコ錦という計算機で測定すると、
  六角とは、三条通りのひとつ南の筋
  になります。御幸町のひとつ西、
  つまり、河原町寄りが、寺町通り。
  ここから、レストラン
  を探して、歩きましたが、
  砂漠に水を求める結果になってしまいました。

  とうとう、四条通りの手前まで、なかった。
  たったひとつのレストランは、カツの専門、

     「かつくら」

  でした。でも、あってよかったヨ。


     【かつくら】     
 
  とんかつ、エビかつ、チキンかつなど、
  かつ専門のレストラン・チェーンです。
  ごまをすり鉢の中で、摺ってそこに、
  赤ワインでつくったとんかつソースを
  たっぷり入れます。
     
    何?

   飲酒運転だって?


  大丈夫なり。
  アルコールは、蒸発
  しております。

  人のことより、あんた、
  亭主が蒸発せんように、気ぃつけや。


奥様 : Mr. Yamada、 What's that ?
      それなあに?


  大根おろしを見て、興味津々のご様子。


山田  : It's grated daikon radish
      with soured soy source.
      大根おろしとポン酢です。


   説明がへたなのか、ご夫婦で、
   ボソボソやりとり。


奥様  : I'd like to have one, the da-i-quon ?
       Would you order it for me ?
       私も 注文してもらえます?

   何でも、どうぞ。
   ここは、お味噌汁も、ごはんも、
   サラダも、おかわり自由。
   大根おろしも、タダで、もってきてもらえますよ。

 

      【河原町から祇園までウォーキング】


   寺町四条から、東へ、歩きます。
   縄手白川には、
   芸舞子の髪結い屋さんがあります。
   山田、ここで、車を取りに戻ります。

   お客様は、ここから、辰巳神社へ。
   待ち合わせ場所は、辰巳神社。

   神社で、待ち合わせ。
   何か、歌謡曲の文句みたい。


ヾ(@^▽^@)ノ


     【迎えに来たぜ】

山田  : Sorry to have kept you waiting long.
       お待たせ~。


みなさん: Mr. Yamada, We're going on with
      the scheduled Kinkakuji Temple.
      山田はん、予定通り、
      金閣寺に行きましょうよ。

山田  : Yes. that's most exactly
      what I suggested for the place to see.
      はいな。見るべきところは、
      言いましたけど、金閣寺でっせ。


     【北大路通り】

   祇園からまともに、河原町を経由したら、
   時間がかかりすぎます。
   とくに、三条京阪の赤信号は長く
   うんざりです。

   なので、東山をいっそ、高野まで出て、
   北大路廻りで、金閣寺に行きます。

   これを

    北大路金や、

   といいます。(ゆえへん、ゆえへん)

   ところで、北大路欣也は、
   京都市の出身です。
   お父さんは、市川 右太衛門。
   お父さんは大阪出身。

   高野から北大路を西へ。
   しばらく行くと、右手に、大徳寺

   京都が2度目のお客様なら、
   是非、案内したい寺ですが、初めての方には、
   やはり、金閣寺がお薦め。

 


     【金閣寺

   
   鏡湖地前で、定番のカメラ撮影。
   お客様、仏像を間近で見たい、
   とおっしゃいます。

   仏像を近くで見ようとするなら、
   広隆寺ですが・・・

   日本人観光客なら、
 
   弥勒半か思惟像も、見る価値の高い仏像ですが、
   結局、三十三間堂の観音様を見ていただくことに。
     


     【三十三間堂


   ここの入場料金600円は、
   いつも思うが、高いなあ。
   お堂を一周するだけなのに。
   毎日、観光客が、1万人来れば、
   毎日、600万円、お金を置いていってくれる。
   年間、2000億円以上のお金だ。
    
   観音さまが人を救う、というよりも、
   人が観音さまを救っているような
   気がしてならない、
   そう思うのは、ゴタだけなのでしょうか?

   さて、お客様、28部衆の作品を

   中央アジアのもので、
   これらの神々は、仏教伝来途上で、
   仏教に帰依していった異教の精鋭たちである。

   ご夫妻、ろうそくを1本づつ、献灯有志。

    (ふーん、なかなか信心深いんだ!)


   湛慶の作品3点が、お留守です。
   1点は、東京、1点は、名古屋、1点が・・・
   どこか、忘れた・・・に貸し出し中。

   

    お堂を出て、正面の庭に来ました。
    ここで、お写真。Say cheese ! 

 


【ホテル帰着は午後5時20分】


  帰りの高速は、
  門真でおりたので、900円安くなった。
  もちろん、お客様負担なので、
  終了時にご請求申し上げます。

  なので、高速は、
  使わなくていい時には、使わない。
  只今、時刻は、午後4時40分。
  
  50分あれば、門真から、じゅうぶんに、
  ANAクラウンプラザに間に合うからだ。


  そして、午後5時20分。
  ホテルに帰着。
  バッチリだぜ。
  そりゃ、もとプロの
  
  タクシー運転手だもの。ガッハハハハハ。


   【教訓】  お昼、およばれになったら、
         せめて900円分、
         安く帰ってあげましょう。


   報酬を受け取りました。 
   そして、聞いて見た。

    「明日は、ガイドは、いりますか?」


    「明日は、私たち、
     インター・コンチネンタル・ホテルよ。
     ・・・・(中略)・・
     なので、大阪駅周辺を見て廻るから、
     あなたのガイドはいらないわ。
     でも、素敵なガイドでした。
     ありがとう。またよろしくね。」


   握手でお別れです。


   おしまい
   山田 錦