第8教室:『ペルル嬢』(フランス語学習)『テレーズ・ラカン』(英語学習)

ドーデの『金の脳みそを持った男』もここで学習しました.

語学学習日記『アルルの女』(19)(ドーデ短編集より)(フランス語学習)


アルルの女(19)
     L'ARLÉSIENNE
       アルルの女


—————————【19】————————————————
                 
  Jan  ne parla plus de*  l'Arlésienne.   Il l'aimait  toujours 
cependant,  et même  plus que jamais*,  depuis  qu'on la lui
avait  montrée  dans  les bras  d'un  autre.   Seulement  il  
était  trop fier  pour*  rien dire ;  c'est  ce qui*  le tua,  le  
pauvre  enfant !  ...


—.————————(訳)—————————————————
                    
ジャンはもうアルルの女のことを話には出しませんでした。
それでも尚もジャンはその女を愛し続けた。女が自分以外
の男に抱かれていることを聞かされてからも、なお一層、
愛し続けたのだ。彼はただプライドが高すぎて、口にする
ことができなかっただけなのです。そしてこのことが、
気の毒なことに、この青年を死なせてしまったのです。


—————————《語句・語法1》————————————————
                   
seulement:  ただ~なだけ
trop fier pour ~:~するのは、あまりにプライドが高すぎる;
       あまりにプライドが高すぎて~できない
 rien は肯定の不定代名詞としても、否定としても用いますので
 訳し方は2通りあります.(どちらでもOK!)
(A)il était trop fier pour rien dire:彼はあまりにもプライドが
           高いので、何も言えなかった.
(B)il était trop fier pour rien dire:彼は何かを言うには、あまり
           にもプライドが高かった.

 ただし(A)の訳を認めない先生もいらっしゃるので、
試験のときは(B)でお願いします.つまり、rien はne や
jamais などのはっきりした否定辞がない限りquelque chose 
の意味になるというのです.

しかしrien は否定辞がなくても否定を表現することもあります.
Rien de nouveau. / 何も新しい[変わった]ことはない. 

ところで本文の場合、私はpour にはすでに否定の意味が込めら
れているのではないかと考えます.
そういうことで
(A)の訳が許されると考えます.
 
 大切なことは rien は quelque chose という意味を内蔵している
ので  ne を伴わないときは注意が必要です.
 たとえば:
   vivre sans rien faire / 「何もしないで暮らす」
 であって、「何もしないことなく暮らす」とすれば、誤訳です.

英語に換算するとanything です.anythingはno や not を伴わない
ときは、本来something の意味をもっていて、それを復活させます.
 

—————————≪語句・語法2≫————————————————
          
ne parla plus de: parler de ~ 「~について話す」
        ne ~ plus  「もはや~ない」      
même plus que jamais: plus que jamais 「今までより一層」
                même この場合は副詞で「~さえ」
        il l'aimait même plus que jamais 
                今までより一層愛してさえいた
        l'aimait のl' つまりla はアルルの女
on la lui avait  montrée:la は「アルルの女」lui は「ジャン」
dans les bras d'un autre :別の男(ジャン以外の男)の腕の中
on avait montrée l'Arlésienne dans les bras d'un autre à Jan
ということです