—————————【19】————————————————
Jan ne parla plus de* l'Arlésienne. Il l'aimait toujours
cependant, et même plus que jamais*, depuis qu'on la lui
avait montrée dans les bras d'un autre. Seulement il
était trop fier pour* rien dire ; c'est ce qui* le tua, le
pauvre enfant ! ...
—.————————(訳)—————————————————
ジャンはもうアルルの女のことを話には出しませんでした。
それでも尚もジャンはその女を愛し続けた。女が自分以外
の男に抱かれていることを聞かされてからも、なお一層、
愛し続けたのだ。彼はただプライドが高すぎて、口にする
ことができなかっただけなのです。そしてこのことが、
気の毒なことに、この青年を死なせてしまったのです。
—————————《語句・語法1》————————————————
seulement: ただ~なだけ
trop fier pour ~:~するのは、あまりにプライドが高すぎる;
あまりにプライドが高すぎて~できない
rien は肯定の不定代名詞としても、否定としても用いますので
訳し方は2通りあります.(どちらでもOK!)
(A)il était trop fier pour rien dire:彼はあまりにもプライドが
高いので、何も言えなかった.
(B)il était trop fier pour rien dire:彼は何かを言うには、あまり
にもプライドが高かった.
ただし(A)の訳を認めない先生もいらっしゃるので、
試験のときは(B)でお願いします.つまり、rien はne や
jamais などのはっきりした否定辞がない限りquelque chose
の意味になるというのです.
しかしrien は否定辞がなくても否定を表現することもあります.
Rien de nouveau. / 何も新しい[変わった]ことはない.
ところで本文の場合、私はpour にはすでに否定の意味が込めら
れているのではないかと考えます.
そういうことで
(A)の訳が許されると考えます.
大切なことは rien は quelque chose という意味を内蔵している
ので ne を伴わないときは注意が必要です.
たとえば:
vivre sans rien faire / 「何もしないで暮らす」
であって、「何もしないことなく暮らす」とすれば、誤訳です.
英語に換算するとanything です.anythingはno や not を伴わない
ときは、本来something の意味をもっていて、それを復活させます.
—————————≪語句・語法2≫————————————————
ne parla plus de: parler de ~ 「~について話す」
ne ~ plus 「もはや~ない」
même plus que jamais: plus que jamais 「今までより一層」
même この場合は副詞で「~さえ」
il l'aimait même plus que jamais
今までより一層愛してさえいた
l'aimait のl' つまりla はアルルの女
on la lui avait montrée:la は「アルルの女」lui は「ジャン」
dans les bras d'un autre :別の男(ジャン以外の男)の腕の中
on avait montrée l'Arlésienne dans les bras d'un autre à Jan
ということです